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クリプトスポリジウム・ジアルジアについて

ここではクリプトスポリジウム等について、臨床的な面より解説をいたします。これらの「寄生性原虫症」は水道水を介して集団発生をすることが内外の報告にあることから、厚生省では、平成 8 年 10 月に「水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針」を策定されました。そこで、当公社も平成 9 年 8 月より検査体制を整備し、検査の受け入れを行っています。


1. クリプトスポリジウム症

(1) 発生状況
1. 国内の集団発生は 1994 年に神奈川県平塚市の雑居ビルで 461 / 736 人が感染し、1996 年には埼玉県越生市で 8,800 / 14,000 人が感染しました。
2. 国外では、1993 年ミルウォーキー市で 40 万 / 80 万人が感染しました。また、散発例として、先進国・発展途上国を問わずに正常宿主での下痢例の数 % からクリプトスポリジウムが検出されると報告があります。

(2) 感染源と伝播様式
感染源は汚染された飲食物、水道水、湖水、患者・患畜の糞便で、伝播様式は経口感染です。

(3) 潜伏期
5 から 10 日

(4) 伝播可能期間
寄生宿主より排出されたオーシストはすでに感染性を有しています。また、水中で数ヶ月感染性を保持し、冷所では 1 年以上生存するとされています。ヒトの下痢便中には 10 億個から 100 億個 / 1 日のオーシストが排出されていることが解っています。

(5) 発症率
≦ 100 個の原虫数でも感染し発病する可能性が大であります。

(6) ヒトの感受性
正常宿主、免疫不全宿主に拘らず感受性で、幼若者ほど感受性が高いものです。生体内では小腸に寄生しますが、AIDS では膵臓、胆道、胆のう、呼吸器からの分離例もあります。

(7) 病原体
病原体は Cryptosporidium paruvum です。

(8) 宿主
Cryptosporidium paruvum はヒト、ウシ、ネコ、ネズミなど、約 80 種の動物の報告があります。

(9) 検査法
「水道水に関するクリプトスポリジウムのオーシスト検出のための暫定的な試験方法」中のショ糖密度勾配遠心法を利用する方法であり、オーシストを蛍光抗体染色して、検出し、微分干渉装置でスポロゾイドの有無を確認します。

(10) 一般的な症状
下痢 (主に水様性下痢)、腹痛、倦怠感、食欲低下、悪心など、37 ℃代の微熱が伴う例も多いものです。下痢は非血性で一日数回程度から 20 回以上の激しい症例まで様々です。

(11) 感染予防
オーシストに感染された可能性のある水道水は煮沸して飲用します。

(12) 大規模流行時の対策
水道水が原因で集団感染が起きた場合、行政的な措置として給水停止、原因の究明と汚染除去がなされます。
家庭用の浄水器は少なくとも 1µm 以上の粒子を確実に除去する性能が必要です。


2. ジアルジア症

(1) 発生状況
ジアルジアはごくありふれた微生物で、この原虫の腸炎の症状は一般に軽症例が多いものです。

(2) 感染源と伝播様式
汚染を受けた飲料水等を介して経口的に感染します。人畜共通感染症として扱われています。

(3) 潜伏期
3 から 20 日 (平均 7 日)

(4) 伝染可能な期間
水中で 3 カ月以上生存可能です。シストを失活させるには 55 ℃で 5 分間の処理が必要とされます。なお、ジアルジアは感染力が強く、ヒトへは 10 個のシストでも感染が成立します。

(5) ヒトの感受性
感受性は普遍的ですが、成人よりも小児の方が感受性が高いと云えます。

(6) 病原体
Giardia lamblia

(7) 宿主
ヒト由来のジアルジアが他の哺乳類に感染するか、逆に動物由来のものがヒトに感染するのかは解っていません。

(9) 検査法
「水道水に関するクリプトスポリジウムのオーシスト検出のための暫定的な試験方法」のショ糖密度勾配遠心法を利用する方法で、シストを蛍光抗体染色して、検出 、微分干渉装置で 4 つの核と楯等の有無を確認します。

(10) 一般的な症状
ジアルジア症の主な臨床症状としては下痢、衰弱感、体重減少、腹痛、悪心、脂肪便などが上げられます。下痢は非血性で水様性ないし泥状便です。排便回数は一日数回程度から 20 回以上と様々です。また、腹痛を伴う例とそうでない例があります。多くの症例は熱を伴いません。

(11) 感染予防
オーシストに感染された可能性のある水道水は煮沸して飲用します。

引用文献 : 益田剛太他 クリプトスポリジウム等原虫疾患に関する「情報」・「資料集」