がん征圧月間も間近ですので各種のがん検診のなかから、今後増大が確実視されているがん検診についてお話ししたいと思います。
一口にがんといっても、発生する臓器は様々です。中でも男性の肺がんと大腸がん、女性の肺がん、乳がんは今後も増加の一途をたどることが予想されています。これらのがんについては、がん死亡率の低減をめざして老人保健法によるがん検診が行われています。
大腸がんは先に挙げたがんの中でも最も増加のスピードが速い事が予想され、ある推計によれば 20 年後にはがん死亡のトップになることはほぼ間違いないとされています。この大腸がん検診がどういう形で実施されているかといいますと、一次スクリーニングが便潜血検査 (2 日法)、二次検査が大腸内視鏡検査 (大腸ファイバー) あるいは大腸 X 線検査です。今回、この大腸がん検診について受診者の方からよく質問を受けるのですが、その疑問にお答えすると同時に大腸がん検診についての理解を深めて頂ければと考えております。
Q1. 便をとる前に食事制限が必要ですか ?
A.
必要ありません。
一次検査として行われる便潜血検査は、以前は食事に含まれる物質と反応して陽性と判定されることがあったため、かなり厳しい食事制限をした上で便を採取する必要があったのですが、現在は免疫便潜血反応といって人の血液 (ヘモグロビン) とだけ反応する検査法が行われていますので、食事制限は全く必要なくなりました。また、魚や肉などの動物の血液とも反応することはありません。
Q2. なぜ 2 回も便を採らないといけないのでしょうか ?
A.
1 回の便の潜血反応だけで判定すると疑陰性 (大腸がんがあるのに便潜血反応が陰性と判定される場合) が約 3 割も存在するといわれています。従って、採便回数を増やすほど大腸がんを見逃す危険性は少なくなりますが、あまり多いと便を出す受診者の方も大変ですし、精密検査を受けないといけない人の数も非常に多くなり検診の効率が悪くなります。そのため、2 日法、3 日法、4 日法と採便回数を増やして検討した結果、費用効率や検診の精度の両面から 2 日法が妥当という結論に達して現在に至っているというわけです。
Q3. 生理中の時に採便しても良いでしょうか ?
A.
尿検査も同様ですが、生理中の時採便すると陽性と判定されることがありますので、生理中は避けたほうが良いでしょう。
Q4. 便秘なので 2 日連続で採ることができないのですがどうしたらよいでしょうか ?
A.
2 日法といっても 2 日連続でないといけないということはありません。検査の精度からいえば、検体は新しいほど良いのですが、便秘症の人は、できるだけ最近の便を 2 回採るようにしてください。
ただし便を採った後の容器を高温多湿の場所においておくと正確な検査ができなくなりますので、冷暗所に保存しておいてください。
Q5. 痔があるので便潜血反応が陽性に出やすいと思うのですが、受けないといけないのでしょうか ?
A.
ある調査によれば、「痔がある」と言う人の便潜血反応陽性率は 5% 「痔はない」人の陽性率は 4% と大差はありません。また、痔からの出血だと思いこんでいたら実は大腸がんからの出血だったということは臨床の現場ではよく耳にします。痔がある人でも便潜血検査を受けて、陽性と判定されたらしっかり精密検査を受ける事が大事です。
Q6. 便潜血検査が陽性ということは必ず大腸がんがあるのですか ?
A.
大腸がん検診の成績を申し上げますと、要精検率 (便潜血が陽性である人の割合) は、およそ 5 ~ 10% であり、がん発見率は 0.10 ~ 0.15% という事になります。言い方を変えますと 1 万人の人が大腸がん検診を受けると約 500 ~ 1,000 人の人が要精検となり、その人達が精密検査を受けた結果、10 ~ 15 人の人に大腸がんが見つかるということになります。従って便潜血陽性だからといって必ずがんがあるわけではない事がおわかりいただけるのではないかと思います。
Q7. 大腸の精密検査は痛かったり苦しかったりしてつらい検査だと聞きますが本当ですか ?
A.
この事は、受診者の方からよく受ける質問です。全員が全く苦痛がなく安全に検査を受けられる事が理想ですが、残念ながらまだその域には達しておりません。しかし、昔に比べれば内視鏡機器などが進歩し、検査技術も安全かつ苦痛の少ない検査法へと進歩しつつありますので、大腸の検査を受けた後で案外楽な検査だったと感想を述べる方のほうが実際には多いと思います。
Q8. 便潜血検査は毎年受けないといけないものですか ?
A.
特に便潜血陰性すなわち「異状なし」の人はぜひ毎年受けることをお勧めします。というのも質問 2. のところで述べたように、大腸がんがあっても便潜血反応が陰性となってしまう場合 (疑陰性) があるわけですから、毎年受けることによってその確率は少なくなっていくわけです。実際、毎年便潜血検査を行っているグループからは 4 年目以降は進行がんは発見されないというデータも報告されています。また、便潜血陽性で精密検査を受けた方は、検査を担当された先生にご相談ください。
以上、多少分かりにくい部分もあったかとおもいますが、皆さんの大腸がん検診に関する理解が多少でも深まれば幸いです。
大腸がん検診は大腸がんを救命可能な時期に見つけるという事が目的ですので、あくまで二次予防ということになります。大腸がんにならない体を作る、すなわち大腸がんのできる原因あるいは過程にもまだまだ不明な点が多いことから確実な方法はありませんが、現在推奨されている 3 つのポイントを下に挙げておきます。皆さんも明日からでもできることがあれば実行し、大腸がんにかかりにくい体づくりを心掛けてください。
1. 高脂肪食にならないようにしましょう。
2. 食物繊維を十分とって便通を整えましょう。
3. 酒やタバコは控えめにしましょう。
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