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肥満について

情報化社会の一端として、パソコンなどを使用する機会が増えて運動不足になりやすく、肥満気味の方が見受けられます。そこで、ここでは肥満についてのお話をしたいと思います。
人間ドックや検診で受診者に、「太りすぎですね」とか「肥満がありますのでもう少し体重を減らしましょう」というと、たいていの人から苦笑いとともに「やせないといけないことは分かっているんですがねぇ … 」という答えが返ってきます。


標準体重と肥満度 (BMI) について

みなさんはご自分の標準体重をどのように計算していますか。昔からよく使われていた計算式は、Broca - 桂変法というもので、

標準体重 (kg) = { 身長 (cm) - 100 } × 0.9

という式から求められます。例えば身長 170cm の人の場合、(170-100) × 0.9 = 63 となり、63kg が標準体重となるわけです。しかし、この方式だと身長の低い人では、矛盾が生じるために最近では BMI(body mass index) による肥満度、標準体重が採用されることが多くなってきています。BMI とは、以下の式によって求められる指数で、身長に関わらず比較的適切に肥満度を評価できるために、国際的にも広く用いられています。

BMI = 体重 (kg) ÷ 身長 (m) ÷ 身長 (m)

また、BMI 方式による標準体重は、BMI=22 ということで計算されますので

標準体重 = 22 × 身 長 (m) × 身長 (m)

ということになります。従って身長 170 cm の人の場合は、22 × 1.7 × 1.7=63.58kg となり、Broca - 桂変法とほぼ同様となります。しかし身長 150cm の場合、Broca - 桂変法だと 45.0kg 、BMI 方式だと 49.5kg となり、標準体重で 4.5kg もの差が出てしまうことになります。今後はできるだけ BMI による標準体重の設定と肥満度の評価が主流となると思われますので、みなさんも一度ご自分の BMI を計算してください。ちなみに、BMI が 26.4 以上ある方は、高度の肥満として注意が必要です。


体脂肪率について

最近医療機器メーカーから、体脂肪計や体脂肪測定機能を持った体重計などが発売されており、体脂肪率という言葉を耳にしたり目にしたりする事があると思います。体脂肪率とは、読んで字のごとし、身体の中で脂肪が占める割合をあらわしたものです。では、なぜ体脂肪率が注目されるようになったのでしょうか。そもそも肥満の定義とは、体脂肪の過剰な状態ということであって、単に体重が多いということではないからです。以前は体脂肪を計る簡単な方法がなかったため、毎日計れる体重を肥満の評価の方法として代用しているということなのです。

プロレスラーなどは、身長 180 ~ 190cm 位で体重が 100 ~ 120kg 程度というような体格の人が多いと思いますが、その多くは筋肉などによる重量であって、脂肪によるものではないことはみなさんも想像がつくと思います。こういう場合は体重による評価では高度の肥満と判定されるのに、体脂肪率では正常ということになります。反対に体重による評価では正常なのに、体脂肪率を測定すると肥満と判定される人もいます。特にこれらの人で内臓脂肪が蓄積しているタイプの人は成人病にかかりやすいとされていますので注意が必要です。


内臓脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満

身体に脂肪が付くといっても、人によりその分布は様々ですが、大きく分けて内臓脂肪型と皮下脂肪型に分けられます。内臓脂肪型は比較的男性に多く、いわゆる「太鼓腹」の人がこれにあたります。皮下脂肪型は女性に多く、下腹部やお尻、大腿部などに脂肪が沈着しやすいタイプです。肥満と生活習慣病 (成人病) の関係からは、前者の内臓脂肪型肥満の人が要注意です。内臓脂肪の沈着は高血圧、高脂血症、糖尿病などの合併率が高く、動脈硬化に関連した病気 (心筋梗塞、脳梗塞など) にかかりやすいからです。特に中年になって体重の増加とともにお腹が出てきた人 (非常に多いと思いますが) は、ご自分の血圧、血糖値、総コレステロール値、中性脂肪値などを再確認してみてください。もし、異常値があった場合は、体脂肪を減らす努力が必要です。

では皮下脂肪型肥満の人は病気にかかる心配がないかというと、そういうわけではありません。あくまでも内臓脂肪型の人に比べれば頻度が少ないというだけですので、やはり体脂肪を減らすことは必要です。


体脂肪を減らすためには

では、どのようにすれば体脂肪を減らし、肥満を解消することができるでしょうか。一言でいうならば食事と運動です。食事ということからいえば、色々なダイエット食品やダイエット法の本が出ていますが、基本的には、栄養のバランスを崩すことなく、全体のカロリーを減らすということです。極端なダイエットは短期間に急激な体重減少を得られたとしても脂肪だけを減らすことは難しく、また長続きしません。それと同時に適度な運動を行うことが、非常に大切です。運動といっても様々なものがありますが、脂肪をエネルギーとして燃焼させる最も効率の良い運動は、「歩く」ということです。歩くといっても、ただ漠然と歩くのではなく、およそ 100m を 1 分位の速さで元気よく歩くことが必要です。これを一回につき 30 分以上 1 週間に 3 回以上続けることで体脂肪を効率よく燃焼させることができるとされています。このほかにも水泳やジョギングなども効果があります。いずれにしても一番大事なことはこれらを継続するということです。よく聞く話ですが、やせようと思って減量に取り組み一時的には頑張ってみたけれど、途中で断念し気が付いてみれば、減量開始の時より体重が増えてしまう場合があります。この場合増えた分は脂肪ですので、さらに生活習慣病の危険度が高まることになります。

これから減量を考えている方は、是非無理のない長続きする計画を立てて実行してください。その計画を日々実行することによって生活習慣病から一歩一歩遠ざかることができるでしょう。